原子核質量
原子質量は原子核の持つ最も基本的な量であって、質量とエネルギーの同等性のために原子のもつ全エネルギーでもあり、またそれゆえに、原子核の安定性を決定し、その崩壊を支配し、反応の起こりやすさに決定的な影響をもっている。原子核質量の性質の理解は原子核物理研究において極めて重要なテーマといえる。原子核質量を扱う方法として、原子核質量を原子核を荷電液滴と見なす描像で記述することができる巨視的部分と、核構造に起因する微視的部分からくる部分とに分けて議論する方法(巨視的・微視的模型)があり、その再現性の精度の高さ及び予測性の性質の良さからこの分野での有力な方法として利用されている。
我々は、巨視的・微視的模型の観点から、原子核を球形原子核を基底とし、変形原子核をその基底の配位混合で表すという独自の方法を構築し、KTUY質量模型として発表した。現在、この方法をもとに、原子核の大域的な性質を理解することを目的に、原子核質量の理論計算を進めている。
主著論文
- Nucl. Phys. A 671 (2000): Single-particle potentials for spherical nuclei
- Nucl. Phys. A 674 (2000): Nuclear Mass formula by a new method
- Prog. Theor. Phys. 113 (2005): Nuclidic Mass Formula on a Spherical Basis with an Improved Even-odd Term
- J. Phys. Soc. Jpn. 82 (2013): Single-particle levels of spherical nuclei in the superheavy and extremely superheavy mass region
- Prog. Theor. Exp. Phys. 113D02 (2014): Estimating fission-barrier height by the spherical-basis method
- 基礎科学ノート, 16 (2008): 質量オリンピック
- 核データニュース, 101 (2012): 原子核質量研究の現状-RIBF-ULIC Symposium: Physics of Rare-RI Ring に参加して-
関連リンク
研究の利用
KTUY質量公式は極めて広域に渡る質量予測を実現している。これにより未知核種の崩壊の理論予測、原子核存在予測に用いられている。以下いくつかの利用例を紹介する。- 45Feからの基底状態2陽子放出の初観測(陽子ドリップ線外の核種、崩壊Q値予測に利用)
- 軽い中性子過剰核における中性子ドリップ線(存在限界線)Physics, Viewpoint: A Walk Along the Dripline (2012),Physics, Viewpoint: Pushing Back the Frontier of Stability (2013)
- 理化学研究所仁科加速器研究センター「ハイゼンベルクの谷」レゴ、および新居浜高専生作成(8mm角檜棒製)、核図表
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