超重元素実験
1990年代以降、超重核領域の新核種(習慣により新同位体と呼ぶことが多い)合成実験の進展が著しくなっている。これは主に1980-1990年頃から重イオン融合核反応の反跳核直接分離装置が活躍しはじめ、超重核領域の合成実験を可能にしたためと理解することができる。その際の標的は鉛、ビスマスを用いることが多く、後述の反応と比較し“冷たい”融合と分類される重イオン反応である。そして2000年以降、アクチノイド領域の変形原子核を標的に用いた“熱い”融合反応を利用した反応系の選択の工夫により、さらに中性子過剰な新同位体を合成することを可能にしている。これらの新同位体合成に関わってきたのはドイツ、ロシア、アメリカ、日本、中国(259Db, 265Bhの新同位体を合成)といったグループであり、現在もしのぎを削っている状況である。日本では理化学研究所で重イオン線形加速器(RILAC)及び気体充填型反跳分離装置(GARIS)の組み合わせで大強度ビーム+ビーム粒子と合成粒子の高率分離化に成功した。RILACの直下流にGARISを設置することにより運用の迅速さやビーム収率の良さなど様々な利点が得られ、GARIS自身としても真空分離装置では得られなかった高収率性、標的冷却効果など、他の装置と比べて優位な特徴を示している。
2002年から一連の実験が始まり、2004年に新元素となる113番元素の同位体、278113を合成することに成功した。現在まで3事象が確認されている。(協力研究機関:埼玉大、新潟大、東大、原子力機構、筑波大、蘭州近代物理学研究所、北京高エネルギー研究所、東北大、山形大、東京理科大)
共著論文
- JPSJ, 73 (2004): Production and Decay Properties of 272111 and its Daughter Nuclei
- JPSJ, 73 (2004): Experiment on the Synthesis of Element 113 in the Reaction 209Bi(70Zn, n)278113, 新発見の113番元素(理研)*ニホニウム4論文(1)
- JPSJ, 76 (2007): Experiment on Synthesis of an Isotope 277112 by 208Pb + 70Zn Reaction
- JPSJ, 76 (2007): Observation of Second Decay Chain from 278113*ニホニウム4論文(2)
- JPSJ, 78 (2009): Production and Decay Properties of 263Hs
- JPSJ, 78 (2009): Decay Properties of 266Bh and 262Db Produced in the 248Cm + 23Na Reaction*ニホニウム4論文(3)
- JPSJ, 80 (2011): Production and Decay Properties of 264Hs and 265Hs
- JPSJ, 81 (2012): New Result in the Production and Decay of an Isotop, 278113, of the 113th Elemente, 3個目の113番元素の合成を新たな崩壊経路で確認(理研) *ニホニウム4論文(4)
ニホニウム、超重元素・超重原子核の解説記事など
- 2018年1月 ニホニウムとその次の元素へ… (新春座談会)、アイソトープニュース (1月号特別号No.2) 2-14
- 2018年6月 超重元素の核的性質(理論)ー超重核の安定の島ー (連載講座「重元素・超重元素の化学」)、RADIOISOTOPES 67(6) 267-275
受賞・注目論文など
- 2004年10月 JPSJ注目論文
Experiment on the Synthesis of Element 113 in the Reaction 209Bi(70Zn,n)278113 - 2006年2月 日本物理学会第11回論文賞
Experiment on the Synthesis of Element 113 in the Reaction 209Bi(70Zn,n)278113 - 2007年4月 JPSJ注目論文
Experiment on Synthesis of an isotope 277112 by 208Pb+70Zn Reaction - 2012年9月 JPSJ注目論文
New Result in the Production and Decay of an Isotope, 278113, of the 113th Element - 2012年9月 JPSJ 2013年高引用論文
New Result in the Production and Decay of an Isotope, 278113, of the 113th Element - 2007年4月,2016年1月,2016年11月-2017年1月,2018年6月 JPSJ トップ20ダウンロード論文
Experiment on Synthesis of an isotope 277112 by 208Pb+70Zn Reaction - 2012年9-12月,2016年1月,6月 JPSJ トップ20ダウンロード論文
New Result in the Production and Decay of an Isotope, 278113, of the 113th Element - 2016年11月 ベストチーム・オブ・ザ・イヤー実行委員会 ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2016 一般部門優秀賞
受賞者: 113番元素(ニホニウム)発見チーム - 2017年1月 埼玉県 彩の国学術文化功労賞
受賞者: 理化学研究所仁科加速器研究センター超重元素研究グループ - 2017年1月 公益財団法人朝日新聞文化財団 朝日賞 113番元素ニホニウム(Nh)の発見と命名
受賞者: 113番元素研究グループ - 2017年2月 日本物理学会 日本物理学会論文賞特別表彰 113番元素合成に関するJPSJ関連4論文
受賞者: 113番元素研究グループ(代表 森田浩介氏) - 2017年4月 日本新聞協会「HAPPY NEWS」 HAPPY NEWS 2016 PERSON 特別賞
受賞者: 理化学研究所 超重元素研究グループ - 2017年7月 日本SF大会におけるファン投票 第48回星雲賞 自由部門 ”ニホニウム”正式名称決定
受賞者: 113番元素研究グループ(代表 森田浩介氏)
関連リンク
page top
GOTO HOMEPAGE of Hiroyuki Koura