2.イオン液体を用いた溶媒抽出法とマテリアル開発に関する基礎研究
イオン液体はカチオンとアニオンのみからなる塩でありながら、室温付近でも液体として存在する物質です。無機物からなる一般的な塩は融点が非常に高く(例えばNaClの融点は約800℃)、室温では固体ですが、非対称で嵩高い有機塩にすることで融点が低下します。典型的なイオン液体の構造を図2に示します。様々なイオンを容易に合成できるため、その組み合わせは無限にあります。

イオン液体の特徴として、蒸気圧が極めて低く、難燃性で熱安定性が高いといった性質から、一般有機溶媒と比較して安全性が高く、事故リスク、環境リスク、健康リスクを低減できると言われています。一方、化学的にユニークな性質として、イオンの組み合わせによって溶媒特性(極性、疎水性、溶媒混和性など)を制御できるため、目的に応じて自分好みのイオン液体を合成できることが最大の魅力です。例えば、イオン液体に疎水性の高いアニオンを導入すると、イオン液体は水にも脂肪族系有機溶媒にも混ざらないようになり、高い極性と高い疎水性という一見矛盾した二元的性質を同時に導入可能です。このようにイオン液体は水や有機溶媒とは大きく異なる溶媒特性を有することから、反応媒体として大きな可能性を秘めています。
我々の研究グループではイオン液体を抽出媒体として用いることで、従来の溶媒抽出法では起こりえない新たな現象を生み出し、学術的な基礎基盤を追究する研究を行っています。具体的には下記のような研究を行っています。
@ 高効率なイオン液体抽出システムの開発
A イオン液体を用いた分子内協同抽出系の開発
B イオン液体を用いた金属イオン応答型抽出発光センサーの開発(Coming soon)
C 金属イオンとイオン液体による錯体形成と分光特性
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