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<抽出法を用いた金属ナノ粒子の作製>

現在、地球規模で環境汚染・資源枯渇問題が深刻化しており、産業廃棄物の処理および有用物質の再資源化が望まれています。
特に日本は資源の浪費大国でありながら、資源が乏しい現状です。
そこで本研究では廃水中から有用金属のみを回収することで廃棄物を二次資源化し、
さらに、その回収金属を光学・磁性・導電材料等として応用が期待されるナノ粒子にすることで付加価値を与えることを目的としています。
具体的には、量子サイズ効果による色彩の変化から、センシング材料として注目を浴びている金ナノ粒子をターゲットとして、
溶媒抽出法により工業廃水等から金イオンのみを選択的に抽出分離し、その抽出した金イオンのナノ粒子化を検討しています。

本研究では界面活性剤と配位子から構成される混合逆ミセル内に特定の金属イオンのみを分離・濃縮し、
さらに逆ミセルの粒径制御によってナノ粒子の粒径をコントロールする手法を考案しました(図1)。
つまり、金属イオンの分離・濃縮そしてナノ粒子合成と粒径制御を同時に行うことが可能となります。








具体的な例として、模擬工業廃水からの金イオンの抽出分離とナノ粒子化を示します。
AOT(界面活性剤) とTODGA(配位子)の混合逆ミセルにより、
7種の金属イオン(AuCl4-, PtCl62-, Pd2+, Zn2+, Cu2+, Ni2+, Fe3+)から
AuCl4-のみを選択的に抽出分離することが可能となります(図2)。






さらに、そのまま抽出相を分取し、ヒドラジンによる還元、ドデカンチオールによる表面保護、エタノールによる精製を行うことにより、
溶液の色が黄色→赤紫色に変化します。これは金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴によるものです(図3)。
また、TEM観察・DLS測定により均一で単分散な金ナノ粒子(平均粒径約7.6 nm)が得られていることが確認されました(図4)。








特許
1) 「逆ミセル液-液抽出法を利用した金属ナノ粒子の製造方法」
  長縄弘親、下条晃司郎、三田村久吉
  特許第5120929号


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