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<逆ミセルと配位子の協同効果を利用した抽出システムの開発>

逆ミセル(図1)とは、アルカンなどの不活性な溶媒中で生成する界面活性剤などのナノ集合体のことを言います。
水溶液中で生成するミセルとは逆に界面活性剤が配向することから、逆ミセルと呼ばれます。
逆ミセルの内部には、内核水相と呼ばれる微小水滴が存在するため、この逆ミセルを金属イオンなどの液-液抽出に利用することができます。
また、逆ミセルと配位子を組み合わせて用いると、顕著な協同効果(シナジー効果)が発現し、金属イオンに対して非常に大きな抽出能と優れた選択的分離能が発揮されます(図2)。

 





ランタノイドの抽出を例にとって、逆ミセルと配位子を組み合わせた際の協同効果を図3に示します。
界面活性剤AOT(2 mM)のみからなる逆ミセル、あるいは配位子CMPO(3 mM)のみを用いた液-液抽出では、
ほとんどランタノイドを抽出できませんが、両者を組み合わせることにより、著しく抽出能が増大し、尚かつ選択的分離能も向上します。







逆ミセルの大きさは、その内部の内核水相の大きさに依存しますが、液-液抽出系の有機相中で生成する逆ミセルは
水相中と同じ活量の水によって飽和されているので、内核水相の大きさをコントロールすることが難しいと言われています。
ところが、協同効果の発現する配位子を含む逆ミセル系では、配位子の濃度を変化させることによって、
金属イオンの高い抽出率を保ったまま、逆ミセルの大きさをコントロールすることが可能です(図4)。



 

参考文献
1) H. Naganawa, H. Suzuki and S. Tachimori
 “Cooperative Effect of Carbamoylmethylene Phosphine Oxide on the Extraction of Lanthanides(III) to Water-in-Oil Microemulsion from Concentrated Nitric Acid Medium”
 Phys. Chem. Chem. Phys., 2, 3247-3253 (2000).
2) H. Suzuki, H. Naganawa, S. Tachimori
 “Extraction of europium(III) into W/O microemulsion containing aerosol OT and a bulky diamide. I. Cooperative Effect.
 Solvent Extraction and Ion Exchange, 21, 527-546 (2003).
3) 長縄弘親・下条晃司郎、
 “ 逆ミセル抽出系において逆ミセルサイズを制御する方法”
 特許第5382563号

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