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<高性能抽出分離剤の開発>

溶媒抽出法における抽出効率や分離効率の改善の1つとして新規抽出剤の開発があります。
しかし、これまで高い機能を有する新規抽出剤が次々と開発されていますが、そのほとんどが高価であり、実用化に至った例はあまりありません。
今でもなお、古くからあるリン酸系抽出剤(D2EHPA, PC-88A, Cyanex系等)やオキシム系抽出剤(Lix系等)が工業的に使用されています。

当研究グループでは安価で高性能な抽出剤としてN, N-dioctyldiglycolamic acid (DODGAA) (図1) を開発しました。



抽出剤DODGAAの特徴は下記のとおりです。

 @ アミド基とカルボン酸をエーテル鎖で連結した三座配位子で強いキレート効果を示す
 A pHによって金属イオンとの相互作用が制御できる
 B ワンステップで容易かつ安価に合成可能(1万円/kg程度です)
 C C, H, O, Nの軽元素のみで構成されており、環境に優しく、焼却処分しても廃棄物がでない(CHON則)
 D 酸に対して安定で、繰り返し利用が可能
 E 水への溶解性が極めて少ない(リン酸系抽出剤の10分の1程度)

DODGAAを用いた56種の金属イオンの抽出挙動を図2に示します。

 

 



例えば、DODGAAはランタノイドに対して高い抽出分離能を示します(図3)。








DODGAAはカルボン酸系抽出剤にもかかわらず、ランタノイドを強酸水溶液から抽出することができます。
選択性は重希土 > 中希土 > 軽希土で、特に隣接軽希土間の分離に優れています。
また、ベースメタル(Fe, Al, Znなど)からランタノイドを分離することも可能です。



この他にもDODGAAは
■ Hg(II)やPb(II)といった有害金属イオンの除去
■ 貴金属混合物からPd(II)の選択的分離回収
■ In(III), Ga(III)の選択的分離回収
にも応用可能です。

上記、DODGAAは当研究チームで開発した新規抽出剤の一例に過ぎません。
当研究チームでは様々な金属イオンの分離に有効な抽出剤を数多く揃えております。
ご興味のある方は

 長縄(naganawa.hirochika(at)jaea.go.jp)
 下条(shimojo.kojiro(at)jaea.go.jp)
まで気軽にお問い合わせ下さい。
(お手数ですが、E-mailは「(at)」を「@」に変更してご利用ください)
金属○○と金属△△を分離したいという技術相談でも歓迎します。

参考文献
1) H. H. Naganawa et al., Solvent Extr. Res. Dev., Jpn, 14, 151-159 (2007).
2) K. Shimojo et al., Anal. Sci., 23, 1427-1430 (2007).
3) K. Shimojo et al., Anal. Sci., 29, 147-150 (2013).
4) K. Shimojo et al., Anal. Sci., 30, 263-269 (2014).
5) K. Shimojo et al., Anal. Sci., 30, 513-517 (2014).
6) 特許第5035788号など特許多数

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