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2025年度

2025年5月15日
新しい「核分裂」の発見! 99番元素アインスタイニウムが導く元素の世界
―超重元素の存在限界と宇宙での元素合成の理解へ―西尾 勝久(極限重元素核科学研究グループ)

先端基礎研究センター極限重元素核科学研究グループの研究フェローが参画する共同研究グループは、メンデレビウム(原子番号101)同位体 258Md の核分裂を観測しました。 258Mdは、米国オークリッジ国立研究所から入手したアインスタイニウム 254Es(原子番号Z=99) を標的とし、JAEAタンデム加速器から供給されるヘリウム(4He)ビームを照射することで生成しました。この結果、258Mdでは、スズ原子核(132Sn)近傍核を2つ生成する質量対称核分裂の経路(モード)と、バリウム(144Ba)近傍核を生成する質量非対称核モードが共存・競合することがわかりました。この現象は、超重元素や天体のr-プロセス元素合成で生成される中性子過剰核の核分裂の特徴を捕まえたもので、元素の限界や天体での元素合成の理解につながることが期待されます。

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2025年4月2日
音波の新しい伝播現象を発見
―次世代の通信技術への展開に期待―中堂 博之(スピン-エネルギー科学研究グループ)

先端基礎研究センタースピン-エネルギー科学研究グループの中堂博之研究主幹が参画する共同研究グループは、機械的な回転運動によって、核スピンの自由度が多重化する事を見いだしました。スピン1/2ではupスピン状態とdownスピン状態の間でしか共鳴は起きず通常1本の信号しか見えないのが常識ですが、独自開発した試料と同じ回転座標系において核磁気共鳴の信号を観測する装置を用いて信号を観測するとスピン1/2にもかかわらず信号が3本に分裂しました。この3本の信号は、4つに分裂したエネルギー状態のそれぞれの間のエネルギーの吸収に対応しており、これを説明するためにはスピン1/2が2つ必要です。つまり試料の回転によってスピン1/2の自由度が2つ生じたと考えられる訳です。このスピン多重化は磁場中で試料を回転したことによる時間の周期性に由来しています。時間周期性を扱う理論である特殊な理論(フロケ理論)を用いて、本実験におけるスピンの状態を解析したところ、本来のフッ素の核スピン1/2の自由度に加えて、回転運動に由来するスピン1/2の自由度が新たに生じることを理論的に示す事ができました。さらに、この2つのスピン1/2が、量子情報における最小の情報単位である1量子ビットの2つ分となる2量子ビットと同等であることも理論的に示しました。このような、1つの核スピンとその回転によって発現した新たなスピンを組み合わせた 2 量子ビットの演算では、通常の方法では必要である 2 つの異なる物理系の結合を必要としないことから、実装する際のエラーを劇的に軽減できることが期待されます。これにより、精度の高い量子演算が可能になります。

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