研究内容
微生物と水溶液中に溶解した元素とが相互作用する細胞表面(バイオ反応場)は、元素の化学状態を変化させる新規の機能発現が期待される未知の反応場である。バイオ反応場にはタンパク質、脂質、糖鎖などの生体分子が存在します。バイオ反応場ではこれらの生体分子と元素とが複雑な相互作用をすることで、特異な機能が発現する可能性があります。
 アクチノイド元素は、dブロック及びfブロック遷移元素系列に見られる性質を併せ持っており、周期律表上で独特の元素群を構成しています
。中でも軽アクチノイド(U、Np、Puなど)は中性付近の水溶液中では3価から6価の多様な原子価状態で存在するとともに、高い価数に起因する加水分解や錯生成反応の容易性による多岐に渡る化学種を形成します。したがって、バイオ反応場におけるアクチノイドとの相互作用では、必須元素との相互作用で得られたこれまでの知見とは異なる、特異な化学状態変化を起こすことが期待されます。
 本グループでは、微生物を対象として微生物細胞と水溶液中の重元素との相互作用を解明する研究を進め、細胞表面あるいは細胞内でPbやUが細胞内のリン酸イオンと反応してnmサイズのウラニルリン酸塩鉱物として析出する(ナノ粒子化)、必須元素との相互作用とは異なる反応を発見しました。また、ナノ粒子化はPdやPtの微生物による還元過程でも検出しました。
 本研究では、バイオ反応場において発現する機能として、アクチノイドのナノ粒子生成機構を生体分子レベルで解明することが目的です。そのために、微生物及び生体分子系と相互作用したアクチノイド等の重元素の化学状態をUV/Vis分光法、SEC-ICPMS、XAFS、NMR、電子顕微鏡、中性子散乱などの微視的解析手法により明らかにしています。さらに、機能を生体分子レベルで解明するために、生体分子を付加した電極を用いて電気化学・分光による解析を行っています。


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  微生物をウラン溶液に添加すると、ウランは細胞に集まってきます。
  細胞の中に取り込まれる元素(写真は鉛)もあります。 鉛は、写真中のAの部分では検出される。Bの部分では検出されない。
  微生物に集まったウランなどの化学状態を放射光施設などで解析しています。 
   元素の沈殿物を電子顕微鏡により分析し、形状や組成を明らかにします。
  微生物が排出するタンパク質などの有機物を分析し、アクチノイドが結合する有機酸を調べています。 
   タンパク質などの生体分子の電子授受を電気化学的な手法で調べて、アクチノイドへの電子授受機構を明らかにしています。
 恒温振とう培養装置で一度に大量の微生物を培養しています。
 微生物が生産したタンパク質をHPLCで分離・精製しています。
 核酸やタンパク質をゲル電気泳動で分析し、その分析画像を撮影する装置です。
バイオイメージングアナライザー。微生物に濃集する放射能を測定し、映像化して解析しています。

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