研 究 短 信

基礎科学セミナー
「f-電子系の磁性と超伝導」を開催



多体電子系理論研究グループ
堀田貴嗣
Basic Science Seminar of Magnetism
and Superconductivity in f-electron
Systems

Takashi HOTTA
Research Group for Many-body
Theory of Electron Systems

 

 ここ数年、f-電子系において新しい超伝導体の発見が相次いでいる。希土類化合物では、重い電子系CeTIn5 (T=Ir, Rh, Co)において比較的高い転移温度Tcをもつ超伝導が発見されており、また、充填スクッテルダイト構造をもつPrOs4Sb12においてTc=1.85Kの超伝導が発見された。特に、このスクッテルダイト超伝導体は、さまざまな異常な振る舞いが大きな注目を集めており、国内外で活発に研究が進められている。

  そして、プルトニウム化合物PuCoGa5において、Tc=18.5Kという驚くべき高温の超伝導が発見されたことは記憶に新しい。さらに、UGe2やURhGeにおいて、強磁性と共存する超伝導が発見されており、その機構に関して様々な議論がなされている。

 このように、f-電子系においては、希土類化合物からウラン化合物、そして超ウラン化合物へと研究のフロンティアが急速に拡大しており、理論・実験それぞれの分野の研究の現状を認識することが重要である。そこで、国内外の研究者の方々にf-電子系の磁性と超伝導に関する最新の研究成果を報告して頂き、今後の展望を議論するために、平成16年2月23日(月)から24日(火)にかけて、東海研究所・先端基礎研究交流棟大会議室において表記の基礎科学セミナーを開催した。

 本セミナーには、国内外から70名近くの参加者があり、二日間という短い期間ではあったが、内容の濃い熱気に溢れる研究会となった。プログラムは、希土類化合物、ウラン化合物、超ウラン化合物、f-電子系理論に関する合計8つのセッションから構成され、15件の招待講演と5件の口頭発表、28件のポスター発表があった。とりわけ、HoCoGa5型結晶構造を有するいわゆる“115系”について多くの発表があった。

  上述のようにCe-115で超伝導が発見された後、U-115、Np-115、Pu-115、Am-115へと115系物質群は拡大を続けており、さまざまな115系化合物の磁性と超伝導についての最新結果の報告と議論が、本セミナーの目的の一つであった。それ以外にも、UGe2やPrOs4Sb12、最近、先端基礎研究センターで発見された新しいウラン化合物超伝導体UIrについての報告があり、また、f-電子系の磁性や超伝導に関する最近の理論の進展についても報告がなされた。

 現在、欧州超ウラン元素研究所、フランス・グルノーブル研究所、そして日本原子力研究所の間で、ウランおよび超ウラン化合物の物性研究に関する国際協定が締結されようとしている。本セミナーにおいて、米国ロスアラモス研究所と欧州超ウラン元素研究所からPu-115やAm-115に関する最新の成果が、先端基礎研究センターと東北大学金属材料研究所からはNp-115を中心とした研究成果の報告があり、さまざまな議論を交わすことができたという点は、国際協定の調印を目前に控えて、まことに意義深いものであったと言えよう。

  また、国内に向けては、原研のアクチノイド化合物研究のポテンシャルの高さをアピールする良い機会になったように思う。これからも、先端基礎研究センターがアクチノイド化合物研究のメッカとして、日本のみならず、世界の研究をリードしていくことを願っている。

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