理事長の齋藤でございます。
本日は、先端基礎研究センター設立10周年記念シンポジウムに、ご多用中にもかかわらず、多数ご出席を賜わり、誠に有難うございます。又、平素から当研究所の活動につきましてご支援、ご協力を賜り、心より感謝申し上げます。
先端基礎研究センターは、原子力分野における可能性を求め世界をリードする先端的な基礎研究の飛躍的な充実・強化を図る目的で平成5年4月に発足し、お蔭様で、本年10周年を迎えることができました。これもひとえにここにお集まりの方々をはじめとして、センターの設立以降今日までの発展に至る間、関係者の皆様方のお力添え、ご指導・ご鞭撻の賜物と、厚く御礼を申し上げる次第であります。
さて、ここで、日本原子力研究所の歴史を極く簡単に振り返ってみますと、皆様ご案内のとおり、日本原子力研究所は、原子力基本法に基づき、「原子力の開発に関する研究等を総合的かつ効率的に行い、原子力の研究、開発及び利用の促進に寄与する」我が国の原子力研究開発の中核的機関として、昭和31年6月に設立されました。
設立以来、我が国の中核的な原子力総合研究開発機関として、原子力のエネルギーとしての利用面と放射線利用の面を並行して進めるとの国の方針の下に、その研究開発の重要なツールである研究炉、試験炉、加速器、各種放射線照射施設等を設置し、自ら築き上げた幅広い分野にわたる基礎、基盤研究開発の成果と研究者、技術者の高いポテンシャルを持って国、社会の要請に応えて参りました。
それらは、40年前の我が国初の原子力発電の成功とその後の安全性研究等による軽水炉発電技術の定着への貢献、国産動力炉開発の技術基盤の構築、高温工学試験研究炉、HTTRによる世界最高温度の原子炉からの熱を利用した水素製造を目標とした開発試験、核融合炉の研究開発等であり、放射線利用の面では、高崎研究所における各種新機能材料の創成や最先端の科学に中性子、放射光、光量子等の利用の途を先導的に拓くなど、放射線利用の促進と産業界への技術移転、先端的な科学技術の先導的寄与等であります。
この間、また、核物理、物性物理や原子炉化学などの分野においても地道に研究を進めてきており、基礎研究に関する十分な素地を構築して参りました。しかしながら、昭和60年前後になりまして、これらの研究が、ともすれば大型プロジェクトの蔭に埋没し、原子力基礎研究におけるブレークスルーを考えるべきであるという議論が巻き起こり、基礎研究部門を再編して活性化させようという機運が盛りあがって参りました。
そのような動きの中で、世の中も徐々に「基礎研究重視」という認識がかなり強くなり、そういう中で原研としても、センター長は原研外部からお招きし、また、研究グループリーダーも半数は外部の方、各グループは原研内と外の研究者を半数ずつで構成するいう画期的な先端基礎研究センターを平成5年に設立した次第であります。初代センター長として、当時大阪大学の理学部長を終えられ、かつ物理学会の会長も歴任されておられた伊達宗行先生に白羽の矢を立てて、お引き受けいただき、また、センターで推進する研究テーマについては、近藤次郎先生に基礎研究推進委員会の委員長をお願いして、いろいろと御議論を重ねていただきました。
本日は、両先生からも、この後ご挨拶をいただく中で、色々なエピソードなどもご披露いただけるかと思います。伊達先生には、6年間、思う存分に腕を奮って戴き、今日の先端基礎研究センターの基盤と外部から揺るぎない評価を戴けるまでに育てていただきました。そして、その後を受けて安岡先生にセンター長をお引き受け戴き、センターの研究を今日まで引っ張って戴いております。
センター設立後、これまでの研究活動により、中性子回折によるタンパク質に結合する水分子の位置・配向観察の世界で初めての成功や、また、超臨界二酸化炭素を反応場として二次廃棄物発生ゼロのウラン廃棄物除染法の開発に成功したこと、さらに最近では、大阪大学と共同で、SPring−8においてクオーク5個からなる新しい素粒子の発見、等の成果をあげてきております。その他にもまだまだお話ししたい画期的な成果が多々ございますが、それは、この後の講演の方にお任せすることといたします。
一方、今日我が国の学術研究体制は、産学官を問わず急激な変革の時期に入っております。原子力分野におきましても、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の原子力二法人が統合することとなり、原子力新法人への移行が間近に迫っている現状がございます。原研にとって、大転換期を迎えることになりますが、このような状況のもとで、本日は10周年を記念して、先端基礎研究センターの現状と今後の在り方について意見交換する場として、当シンポジウムを開催する運びとなりました。
本日のプログラムとしては、安岡センター長からの「先端基礎研究センターの研究活動」についての説明、センターの国際化の一環として重点的に推進してきている重元素マイクロバイオロジー及び原子力基礎科学に関する学術講演、さらに、統合新法人も視野に入れて、原子力ミッション研究開発と基礎研究との関連について議論するパネル討論がございます。どうか、センターの研究成果について、
また今後の基礎研究のあり方などについて、皆様方の活発なご議論をいただきたいと思います。
また、講師、コーディネーター、パネリストとして原研以外の方々に多大の御協力をいただき、心から御礼申し上げます。ご参加の皆様方のご協力によりまして是非ともこのシンポジウムを実りあるものにしていただきたく、お願い申し上げますとともに、今後とも皆様のなお一層のご支援、ご協力をお願い申し上げ、私の挨拶とさせていただきます。
ご静聴ありがとうございました。
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