パネル討論「原子力ミッション研究と基礎研究」

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吉田善行

「先端基礎研究センターでのウラン、プルトニウムの超臨界二酸化炭素
抽出分離法の開発とその波及効果、これからの基礎研究の方向」

 先端基礎研究センターで10年間、アクチノイドの溶液化学の研究を実施してきた。そこでは主に、機能性反応場でのアクチノイドイオンの状態と反応性を解明し、イオン種ごとの特異反応を探り当ててこれを利用して効率の高い分離法、選択性が高い検出法の開発を目指した。この研究の一環として、超臨界二酸化炭素を媒体として用いて、ウランやプルトニウムイオンを硝酸溶液中から抽出する方法の開発に成功した。この方法を利用すると、ウランやプルトニウムを核分裂生成物から選択的に分離できるので、同法は使用済み燃料の再処理に適用できる可能性を有している。

  さらに、硝酸-TBP錯体を添加した超臨界二酸化炭素媒体を用いて、固体試料中から直接、ウラン酸化物を溶解、除去する方法を開発した。この方法を用いると、高濃度硝酸などを用いずにウラン廃棄物などの固体中のウランを効率よく除去できる可能性がある。また同法は、酸や有機溶媒などの二次廃棄物の発生量を極力低減しうるという、得がたい利点を有している。先端基礎研究センターでウランの除染反応の原理を基礎的に明らかにした後、より実用に近い工学的課題も含めた研究として進展させることが次の段階で必要と判断し、同センターからバックエンド技術部に研究の場を移すこととした。現在、民間企業と大学との共同研究体制のものとで、同法の実用化のための研究が進められている。

  これは基礎研究部門での成果が、実用化を目指した研究に発展した一つの例であるが、今後の基礎研究とミッション研究のあり方を検討する上で参考になればと思い紹介した。

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