パネル討論「原子力ミッション研究と基礎研究」

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高野秀機

「加速器駆動核変換システムの研究開発と加速器、核物理、材料、化学などの研究」

 地球温暖化問題を解決し、”満足な経済、教育、ライフスタイルを持続できるエネルギーシステムを開発し構築すること”は、省エネルギー、再生可能エネルギー、天然ガス利用そして原子力利用のベストミックスによって可能となろう。しかし、原子力発電所の使用済み燃料の中には、数千年から数百万年といった長寿命放射性核種が含まれていて、この安全な処分が原子力エネルギー利用の最も重要な課題となっている。このため分離変換技術の研究開発が行われている。分離技術は、高レベル廃棄物(HLW)を核変換対象核種、資源化可能性核種とその他のグループ群に分離する、いわゆるゴミの分別・減容に対応する技術開発である。この仕分けにより、廃棄物の量は約1/5〜1/10に減容できる可能性があると見通されている。

  また、核変換技術は、燃えるゴミを燃えないゴミと一緒に燃焼させ、これらの持つ長期的毒性を2桁以上低減できうると見通されており、その際の発熱を利用して発電するリサイクルシステムである。原研では「加速器駆動核変換システムの研究開発」(図2)を進めている。このシステムでは、長寿命放射性核種に含まれるマイナーアクチノイドを主な燃料にした未臨界原子炉を作る。この未臨界原子炉は、外から中性子を投入して初めて核分裂反応を持続させることができる。中性子は高エネルギーに加速した陽子ビームと鉛・ビスマスターゲットとの衝突による核破砕反応で発生させる。

 これまでに、システムの基本概念設計を行い、大強度陽子加速器を使った研究開発計画を策定するとともに、核燃料から加速器開発まで多岐にわたる分野の研究開発を行ってきている。マイナーアクチノイド核データ、高エネルギー中性子反応データ等の核データ、未臨界炉の炉物理、陽子ビーム窓及び核破砕ターゲットの鉛ビスマス技術・材料、(Am,Cm, レアアース)の分離、(Sr, Cs、α核種)の分離技術、マイナーアクチノイド窒化物燃料の製造・乾式分離技術、高信頼性の超伝導線形加速器の開発等に関わる多くの基礎研究課題がある。基礎部門の研究者ともよく交流して、今後の研究開発を進めていきたい。

 

 

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