パネル討論「原子力ミッション研究と基礎研究」
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岩村公道
「低減速軽水炉の特徴と重要開発項目、基礎研究との接点等」
エネルギーシステム研究部を中心に研究を進めている低減速軽水炉を紹介する。低減速軽水炉とは中性子減速の程度を低く抑えて、高速増殖炉の中性子スペクトルに近づけ、水冷却炉心で増殖性能を実現した軽水冷却高速炉(図1)である。現行軽水炉の優れた運転・保守性を維持するとともに、Pu多重リサイクルを可能とする革新的水冷却炉である。水による中性子減速を抑制し、1を超える転換比(増殖性)を確保するため、稠密炉心を採用する。稠密炉心では冷却水が通過する燃料棒間隔が約1mmで現行炉心の3分の1である。また、炉心の除熱低下時核反応を自然抑制するため負のボイド反応度係数を確保する扁平二重炉心を採用する。この低減速軽水炉を実現することにより今後100年、200年以上のわが国の原子力発電のシナリオを描くことができる。 これまでの研究開発の現状と基礎研究への期待を述べたい。最重要課題は稠密炉心の除熱技術である。現在、大型試験による除熱限界データの取得を行っているが、今後は除熱限界の機構解明により、大規模実験を必要としない熱流動設計技術の実現を期待したい。核設計技術の確立も不可欠である。このため、FCAなどの臨界実験装置を用いて基本的なデータを取得するとともに、ベースになる核データについてはより信頼性の高い実験データ取得、原子核理論計算の高度化が求められる。 最後に、低減速軽水炉研究開発を通じ、原子力研究開発の基盤となる人材の育成、さらには産業界への貢献のため、大学、産業界との密接な連携を取りながら進めていきたい。 |