来 賓 挨 拶

近藤 次郎
東京大学 名誉教授 
財団法人国際科学技術財団 理事長
日本原子力研究所
顧問
基礎研究推進委員長

                                                         

 早いもので、先端基礎研究センターができましてから、10年以上経ち本日のセンター設立10周年記念シンポジウムを迎えました。日本原子力研究所は当たり前のことですが、新しくここで物を作って売ろうなどという研究をしているのではございません。最初のセンター長でいらした、伊達宗行先生は、ここでの研究の一部に黎明研究と言う名前を付けられました。よく萌芽的研究などというのがありますが、伊達先生のお付けになったのは黎明研究と言うのでありました。
 
  はるか地平線の向こうから太陽がまだ昇る前に明るくなる、そういう大きい期待をいだかせる研究活動でございまして、これから太陽が昇って来るという非常に大きな期待をもたせるような研究をやるというのが先端基礎研究センターの特色であり、このような提示をなさいました。伊達先生の非常にいい御着想ではないかと思います。
 

 それを受け継がれまして、安岡弘志センター長の時代になりまして、もちろん伊達先生の方針を受け継がれて日の出よりもっと前の水平線のかなたを狙った研究をなさって推進しておられますが、それ以上に安岡先生は、物性研の所長でいらした方でもございますが、原子力、原子核で物性に関連がある研究に主力を注がれるとともに、海外の研究者とも色々連絡を密にされて国際シンポジウムを2000年、2001年、2002年と企画されて、回を重ねてこられました。
 
  私は先端基礎研究センターが、創立される前から原研と関わっておりまして、最初に原研の研究に協賛したのは、昭和54年でございます。四半世紀も前で、その頃はTMIの事故がありました後でして、放射性物質がどのように環境に拡散していくかというのをコンピュータで計算する、拡散のすばやい計算をするというもので、当時はSPEEDI(スピーディー)という名前を付けたシステムの開発を致しましたが、そういったような深い長い思い出があります。
 

 先端基礎研究センターができまして、本日は10周年の非常におめでたい節目を記念してシンポジウムを開催されました。僭越でございますが、これからますます職員の皆様方、特に、特色としては、大学の先生方と交流を盛んになさって、研究を進めてゆかれ、ますます原研が次の20年、あるいは30年に向かって大いに進歩を遂げられますことを祈念いたしまして、簡単ではございますが、来賓としてのスピーチとさせていただきます。

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